トンデモ医療が横行しています。
がんの放置療法、反ワクチン、脱ステロイド、エネルギー療法、酵素サプリメント、デトックス、放射能除去、経皮毒、水素水、コーヒー浣腸、胎盤食…etc
こういったネット上のトンデモ医療情報の多くは、高額な自由診療を扱うクリニックや健康食品・健康グッズの販売ページにリンクされています。
「冷えとり健康法」もそのひとつ。
「足元が冷えていると気の巡りが滞って病気の原因になる」「靴下に穴が空くのは毒素が出ている証拠」という根拠のない話を信じ、冷え性の女性たちは真夏でも5枚も6枚も靴下を重ねばきしているのだとか。
シルクやウールは化繊より暖かいけど、そんなに重ねばきしたら血行を阻害して逆効果なのでは? 靴下用ホッカイロで良くない?
しかし、「靴下の重ねばきで冷えを取ると健康になる」と顧客を教育できたら、高単価な天然素材の靴下を1人あたり5倍も6倍もの数量買わせることができます。
いい商売ですね!
似たような感じで、布ナプキンやら電磁波除去グッズやら、各種健康食品・健康グッズが飛ぶように売れてゆきます。
こんな分かりやすいトンデモ医療の嘘に、なぜ人は騙されてしまうのでしょうか?
恥ずかしながら、私もトンデモ医療的なものに頼ってしまったことがあります。
目次
トンデモ医療に頼ってしまった体験談
あれは1年ほど前のこと。メッセンジャーのアプリに出てきた広告に目がとまりました。
「セルライト潰し専門店がオープン!!」
私は高校生のときに激太りしたことがあって、太もものセルライトのボコボコが気になっていました。
今だけキャンペーン価格?!速効で電話しなきゃ!!
と一瞬テンションがマックスになりましたが、いやいや、本当に効くのか怪しいからちゃんとリサーチしよう、とライター魂を発動し、調べてみました。
事実:セルライトは消えない
普通にググったのではエステとかリンパマッサージ、ボディクリームのアフィリエイト(広告)記事しか出てきません。
こういう記事は広告主の商品が売れるような情報しか書きませんし、根拠も体験談レベルです。
そこで「セルライト 論文」で検索してみたところ、やっと医師が書いているマトモそうな記事を発見しました。
が、読んで絶望しました。
そもそも、セルライトが何なのかも現代の医療では顕微鏡で見ても良く分からないし、治療法もないらしいのです。
エステサロンでのセルライト解消法はマッサージかエンダモロジーと言う機械になると思います。これらはエステサロンの広告などで大々的に宣伝されていますが、実はあまり効果的な方法ではないと考えます。
(中略:いろいろな論文から拾ったエビデンス)
エンダモロジー以外に揉みだしと言うマッサージもあるようですが、マッサージはセルライト部分の水分を移動させることによって一時的に症状が改善したように見られることもありますが、根本的な解決ではないのですぐに元に戻ってしまいますし、そもそも効果としても乏しいでしょう。
引用:ボコボコ解消!医師が教えるセルライトを除去する正しい方法|医師が教えるキレイの教科書
ぐぬぬ、揉んでもダメなのか。
もう一人、別の医師らしき人のブログでも…
2004年にカルフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)が
『美容とレーザー治療雑誌』に「セルライト:生理学と治療法のレビュー」という総説論文を書いています。(中略)
「(セルライトの)治療法は4つのメイン・カテゴリーに分けられる。悪化の要素を遅らせるための物理的、化学的方法と、薬物的治療法とレーザー治療法である。セルライトに対して効果的な治療法は、本当は存在しない」(中略)
ですから、エステで行われている、リンパマッサージ、高周波、高価なコスメティック・クリーム、圧迫バンドを巻いての遠赤外線、美容整形外科でやっているコラーゲン注射、レーザー治療や薬物療法は全て、科学的根拠がないというのが結論です。
引用:セルライトのエビデンス
まじか。私はこの太ももにボコボコを抱えたまま一生を送らなければならないのか。
いや、まだわからない!諦めちゃダメだ!
医者なんかより、現実の太ももを細くしてきたエステの人に直接話を聞いてみよう。
トンデモ医療にすがってみる
ワラにもすがる思いで、私はとあるエステ店に足を運びました。
壁には痩せてキレイになった人たちのポスター、キャビネットには2kg分の脂肪の模型がインパクトを放っています。
待ってる間にパンフレットやファイリングされた資料を眺めていると、ここは単なるマッサージではなく、いろんな最新のマシンを備えてセルライトを撲滅してくれるらしい。
小柄ですらっとした、そこはかとなく元ギャルっぽいお姉さんが説明してくれました。
お姉さんは、紙に3色ボールペンでセルライトの仕組みを説明してくれました。
エビデンスは? などと聞ける雰囲気ではなく、ふむふむと話を聞いて体験へ。
ローラーで肉を挟みながら全身ゴリゴリ。
ひたすら痛い。けど、特に内出血とかはなかったです。
ビフォーアフターの写真を見せてもらいました。
うーん? 言われてみれば若干シルエットが変わったような気がしないでもない。
一時的なのかどうか確認するため、その場で申し込みはせず様子を見てみることにしました。
1週間後。お風呂の鏡で見てみると、いつものボコボコが復活していました。
そうなりますよね。うん。
いやいや、まだ分からない。半年ぐらい続けたらキレイに消えるのかもしれないじゃん。
うーん。うーん・・・。
やめとくか。
価格が30万円だったのでエステは思いとどまりましたが、ワンチャンにかけて3,000円のクリームとかマッサージグッズ(とげとげでコロコロするやつ)を買ってしまいました。
お風呂上がりにゴリゴリやってクリームを塗ると、セルライトがちょっとだけ滑らかになったような気がします。ちょっとだけ。
トンデモ医療がくれる希望、奪われる健康とお金
「セルライトは消えない」「エビデンスはない」
そっちが事実だったとして、だから何だって言うのでしょうか。もう絶望です。
事実は私を救ってくれなかったけど、エステの最新マシンとかセルライト用クリームは生きる希望を与えてくれました。
ポスターに載ってたダイエット成功者みたいに、私だってみたいなすべすべの太ももになって、海とかプールでビキニを着られる日が来るかもしれないじゃないか!
たぶん、トンデモ医療にハマってしまう人たちもワラにもすがる思いなのでしょう。
トンデモ医療の効果「希望」
家族がガンになって、病院の医者から「もう治りません。薬で痛みを和らげることしかできません」と言われた。
病院不信になってるところに、「このシールを耳に貼ると治りますよ」「このキノコを食べるといいですよ」なんて言われたら、希望が持てるじゃないですか。
もしかしたら医者も知らない新しい何かなのかも?ってワンチャンやってみようと思うじゃないですか。
その状況で、そんなの意味ないよ、何の効き目もないよ、ムダだよって言われても何の慰めにもなりません。
トンデモ医療は嘘です。心に希望を持たせてくれる優しい嘘です。
戦争で負傷して死にそうな兵士に、「致命傷じゃないから大丈夫だ、病院船に乗って帰れるよ」と言うのと同じ嘘。
もう助からないに決まってるけれど、心は希望で救われる。
でも、そういうのって本当に手の施しようがなくなってからの話だし、別に大金をかける必要性もないんじゃなかろうか?
トンデモ医療の問題点1 治る病気が治らない
トンデモ医療にも効果が出ることがあります。
「これで治るんだ!」という気力で本当に治ってしまう、プラシーボ効果です。
病院の薬などは、プラシーボじゃなくて本当に効果が出るのかどうかを「ランダム化比較試験」でチェックしています。
ランダムに選ばれた人たちを本物の薬を飲む人とニセ薬を飲むに分け、研究者も被験者も誰が本物の薬を飲んでいるのか分からない状態で試験を行います。
こうすることで薬を飲む人のプラシーボ効果や、研究者の主観が入らないようにしているんですね。
ところがトンデモ医療では、ランダム化比較試験は行われることはまずありません。
コストがかかって大変だし、ちゃんとやったら嘘なのがバレちゃうからやるわけないよね!
せいぜい、数人のモニターを使った簡単な実験や、「治った」という人の体験談を載せている程度。
本当に良くなったかもしれませんが、それがプラシーボ効果なのか、はたまた本当に薬効があったのかわ分からないのです。
ここでは個別の健康食品や民間療法の有効性は問わず、「エビデンスがなくプラシーボ程度の効果しかないが、特に害もないもの」をトンデモ医療と定義して話を進めることにします。
健康な人がトンデモ健康法をやって、プラシーボ効果でなんとなく元気になれるならそれは構わないと思います。
たとえばブルーベリーに含まれるアントシアニンが目に良いと信じられていますが、医学的な効果は証明されていません。
しかし、いつもトーストに塗っているジャムをブルーベリージャムに変えたら、なんとなく目の疲れが取れたような気がする。
おそらく気のせい(プラシーボ)でしかありませんが、イチゴジャムよりもブルーベリージャムに変えるだけですから健康被害もありません。
問題なのは、病気の人、または病気を避けられたはずの人が、トンデモ医療のせいで通常の医療を拒否し、治る病気・避けられた病気にかかり命を落としてしまうケースです。
たとえば、早期に発見したがんに対し手術や薬物療法などの標準治療を行えば完治できたかもしれないのに、トンデモ医療の情報を信じて標準治療を拒否、民間療法に頼った結果、がんが悪化して亡くなってしまう人がいます[1]。
もう一つ例を挙げると、ワクチンは安全ではないと考える「反ワクチン派」が多い欧州でははしか(麻疹)の感染者数が異常に増えています。
欧州地域53カ国では2018年上半期、4万1000人を超え、死者は37人に上りました[2]。
もちろん手術や薬、ワクチンにはまれに事故やアナフィラキシーのような副作用・副反応が起こる可能性もあり、100%安全ではありません。
しかし、治療を拒否して症状が悪化し、後遺症が残ったり死に至ったりする確率と比べれば、リスクはほとんど無いに等しい程度のもの。
トンデモ医療の嘘情報で、治るはずだった人が治らないのは問題です。
トンデモ医療の問題点2 ムダにお金がかかる
もう一つの問題点は、ムダにお金がかかることです。
トンデモ医療では、もっともらしい理論体系や治療器具などが用いられ、「保険は効かないけれど、海外セレブは使っている最新の治療法ですよ」ということで高額の施術費用を設定します。
たとえば、ホメオパシー。
ホメオパシーの講座で話を聞いたことがあるのですが、「レメディ」と呼ばれるホメオパシーの薬は「いろんな物質を高度に希釈震盪(しんとう)してエネルギーを転写した砂糖玉」だそうです。
「トリカブト」などぎょっとするレメディーものもありますが、元の物質の成分は全く残らないので無害なのだそう。
要するに、ただの砂糖玉。
何十種類ものレメディーは症状によって使い分けがあるらしい。たとえば、子供の発熱にはこれとこれ、のように。
しかし、副作用はないので、間違えて別なのを飲んでも問題ないらしい。なんじゃそりゃ。
「魔法の薬だよ」ってコンペイトウ食べるのと同じ、プラシーボ効果しかないってことでは?
日本医師会は「ホメオパシーの治療効果は科学的に明確に否定されています。それを「効果がある」と称して治療に使用することは厳に慎むべき行為です。」[3]という見解。
厚生労働省も「通常医療の治療の代わりにホメオパシーを利用する、または、病的疾患について医療機関を受診することを先送りにするために、ホメオパシーを利用しないでください。」[4]と注意喚起しています。
なのに、そのちょびっとの砂糖玉がキットで1箱1万円以上で売られ、「症状に最適なレメディーを選ぶホメオパシーセッション」なるものも高額で行われています。
病院に行けば保険で数百円〜数千円で済んでちゃんと薬効が証明された薬をもらえるのに、ムダすぎません?
しっかり話を聞いて欲しい、不安を受け止めて欲しいっていうニーズには合致してるのかもしれません。
でも、それだったら「話を聞く」「相談に乗る」サービスに対してお金をもらえばいいよね?
毒にも薬にもならないレメディーで儲けるっていうのはどうなのでしょうか。
優しいトンデモ医療に身を委ねるな|まとめ
医療に100%はありません。
まだ発見されていない事実もあるかもしれないし、今までの標準治療が覆るかもしれない。
インフルエンザワクチン1つとっても、ある医師は
「インフルエンザワクチンは100%じゃないけどまあまあ効くから打ったほうがいいかもよ。」
引用:【医師直伝】インフルエンザワクチン…結局打った方がいいの?打たない方がいい
ぐらいのことしか言えないけど、その医師自身や周囲の医師・看護師は全員インフルエンザワクチンを打っているとのこと。
完全にこれで大丈夫っていうものはないし、皆がやってるから大丈夫とも言い切れない。個人差もある。
その上、今の医療では分からないこと、直せない病気もあります。
トンデモ医療は、そんな不安や不満につけ込み、あり得ない希望を見させて、お金を巻き上げていきます。
もうどうしようもなくなって、神頼みと同じ意味ですがるのは仕方が無いけれど、少なくとも標準治療で治る見込みがあるのに手を出すべきものではないと、私は考えます。
トンデモ医療の優しい嘘に身を委ねてはいけません。
残酷で面白くない事実と共に生きましょう。
私もセルライトと共に、強く生きます。
トンデモ医療にハマる人って、ネットワークビジネス(マルチ商法)にもハマってたりしません?
注意して欲しいアロマのネットワークビジネスについてもまとめていますので、合わせてどうぞ。
[1]インタビュー(2016年3月20日号)近藤理論を放置してはいけない,日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授・部長 外来化学療法室長 勝俣 範之 氏|日経メディカル
[2]欧州ではしか(麻疹)が大流行の恐れ 半年で感染者4万1000人超の異常な勢いを煽るフェイクニュース
[3]「ホメオパシー」への対応について|日本医学会
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。管理人の佐藤想一郎と申します。
私が執筆しました、レポート『Cycle(サイクル)』では、今まであまり語られることのなかった〝引き寄せの法則の、もう1つの側面〟について書いています。
・「ワクワク」のダークサイド(暗黒面)とは
・9割の人が見落とす〝引き寄せられない〟根本原因
・想像すら超えた未来を引き寄せる、運命を変える秘訣
といったことにも触れています。
よろしければ読んでみてくださいね。
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