魂を磨く

チベット仏教の輪廻転生とは? 生れ変わりの元少年が語る驚愕の事実

チベット仏教の輪廻転生

あなたは前世を信じますか? 前世はいつの時代のどこの人だったのか、考えてみるとワクワクしますね。

ところが、前世は必ずしも人間だけとは限らないようです。

チベット仏教の輪廻転生について色々調べてみたら、驚きの事実が明らかになりました。

チベット仏教の輪廻転生の教えとは?

人間に生まれ変われるかは行い次第。六道輪廻とは?

キリスト教では死んで肉体が滅びたら、魂は天国か地獄に行っておしまいです。

一方、仏教では肉体が死んでも魂は滅びずに生まれ変わり、永遠に生き続けるとされています。これを「輪廻転生(りんねてんせい)」と言います。

チベット仏教の場合、魂が生まれ変わるのは人間だけとは限らず、生前の行いによって次の6つの世界のどれかに転生します(六道輪廻)。


チベット仏教の六道輪廻図
引用元:脳と心とブッダの悟り

車輪の中の6つに分けられた世界の上半分が天道・阿修羅道・人間道、下半分が地獄道・餓鬼道・畜生道です。

  • 天道(神)…一番いい神の世界。とはいえ、寿命もあるし、心の苦しみはあります。
  • 阿修羅道(非神)…嫉妬の心に苦しむ争いの世界。
  • 人間道…普通の人間の世界。執着する心に苦しみます。
  • 地獄道…悪いことをすると落ちる、いわゆる地獄。怒りの苦しみ。
  • 餓鬼道…貪る心に苦しむ、食べるものがない世界。
  • 畜生道…外敵に脅かされる、無知の心の苦しみ。

六道、どこに行っても結局は全部が苦しみなんですね。

車輪をもって噛み付いてる三つ目の怖いやつは「ヤマ」という神様です。

閻魔大王みたいな風貌ですが、チベット仏教では仏教を守る役割を果たしています。

このヤマが車輪を回し、人の魂は苦しみだらけの六界をぐるぐる回っている、というのがチベット仏教の輪廻転生なのです。

目指せ解脱!この世は苦しい修行の場だけど…

実際、生きていれば大変なことはありますよね。

手に入れれば失うこともありますし、生まれたら皆必ず死んでいき、出会ったら別れがあり、病気になったり、年老いたりもします。

「こんな人生やめてやる」と自殺なんかしても、また生まれ変わって次の苦しみが始まるだけ。

苦しみのない世界なんてあるのでしょうか?

それが、あるんです!

チベット仏教によれば、悟りを開けば輪廻の車輪の中から脱出できると考えられています。

生まれて苦しんで死に、また生まれる…というループから逃れて、生と死を超越した永遠の意識世界、「仏」の世界に行けるようになります。

これが「解脱(げだつ)」です。

チベット『死者の書』という経典には、死んでから解脱するまでがどんな風になるのか「死人目線」で事細かに書かれています。

『死者の書』によると、肉体が滅びた後、まぶしい大きな赤い光が見えると言います。

この光こそが生命の本体であり、光にまっすぐ進んで溶け込めばそのまま解脱して、苦しみばかりの輪廻は終了。幸せな「仏」ワールドに行けます。

しかし、それがとても大変。本物の光の他にニセの「餓鬼の光」が現れて現世の欲望をそそる幻影を見せてくるんです。

そこに少しでも執着したら、餓鬼道へ真っ逆さま。解脱はまた来世におあずけとなります。

幻影に惑わされないようにするには、現世でしっかり修行を積んでおかなければなりません。

そのため、チベットの仏教徒は解脱を願って苦行に励み、良いことをして徳を積むのです。

また、身内が死ぬときは死の間際から死後49日まで毎日お経を読んで、魂が迷子にならずに解脱できるようナビゲートします。

読経の援護があれば、意外と楽に解脱できるのかもしれませんね。

思い通りに転生できるヒーローたち

ところが、せっかく悟りを開いて解脱できるのに、苦しみまみれの人間界に戻ってくる人も要るというのです。

悟りを開いた人の一部は菩薩となり、自分の力で自由に転生出来るようになります。

彼らはあえて解脱せずに人間界に転生し、人々やすべての生き物が悟りを開けるように働き続けます。

皆が解脱して、個人を超越した世界に行けるまで。

あら? この話、どこかで聞き覚えがあるような…。

こ、これはエヴァンゲリオンの「人類補完計画(※)」じゃありませんか!

碇司令は人間界にわざわざ転生して救済しにきた菩薩だったということですね。

※アニメ「エヴァンゲリオン」で、人類を襲う超ヤバイ敵に対抗するため、人類全員を合体して強くしてしまおうという計画のこと。

冗談はさておき、有名なダライ・ラマ法王も、現世に舞い戻った菩薩の一人です。

チベット仏教の転生ラマ制度とは?

オバマ大統領と対談するダライ・ラマ14世
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世襲じゃなかったダライ・ラマ法王

ダライ・ラマ法王は、チベットの最高指導者です。

2018年現在はダライ・ラマ”14世”ですが、これは世襲で14代目という意味ではなく、ダライ・ラマ法王が14回も転生しているということなんですって。

先代が無くなると、次の生まれ変わりが探され、ダライ・ラマ法王の地位と財産を受け継ぎます。

ところで、この「生まれ変わり」はどうやって探すのでしょうか?

次のダライ・ラマの認定方法

ダライ・ラマが転生した子どもはどこにいるのでしょうか?

探し方は、チベット僧の予言で大まかな地域と子どもの特徴を絞り込み、条件に合致する子どもから候補者をピックアップします。

そして、本当に生まれ変わった化身なのか確認するため、前世の記憶が調査されます。

調べ方は、先代の持ち物に愛着を示すかどうか、クセが似ているかどうか、などをチェックします。

現在のダライ・ラマ14世は、3歳のときに審査を受けました。

13世の遺品を見て「それ、ぼくのだ」と良い、全て本物を選び当てたのだそうです。

これだけだと本当かなあ、と疑わしい部分もありますね。

しかし、チベットの長としてノーベル平和賞を受賞するほどの働きと、徳の高いTwitterを見ると、やっぱり転生してるのではと思わせられます。

チベットを散々な目に合わせてきた中国(※後述)にさえも、非暴力で平和的な歩み寄りをするのは中国人の魂も救済の対象だからなのでしょうね。

ところが、一方ではこんな人も…。

「前世の記憶は無い」

ダライ・ラマ法王のナンバーツーと言われるリンポチェ師は、ある日、突然ダライ・ラマから手紙が来て、

「キミは偉大な高僧ザ・チョジェの6度目の生まれ変わりだ」

と認定されたそうです。

通常は物心つく前の子どものうちに認定されますが、先代のリンポチェ5世が毛沢東に捕まえられていて長く生死不明だったために捜索は随分と遅れていました。

当時、16歳。長髪で、穴あきジーンズを履いてバスケに夢中の、ごく普通の少年でした。

前世の記憶はないし、それまでは自分をスピリチュアルな人間だと思ったこともありません。

それが、一瞬で「神聖な少年」になってしまったのです。

中身は急に変わることはできず、時間をかけて境遇を受け入れたと言います。

現在、リンポチェ師は日本でもたびたび講話を行うなど活躍しています。

小さい頃は前世の記憶があったのを成長して忘れてしまったのでしょうか。それとも、環境適応力が高い人だった?

いずれにしても、「転生」によって高僧のカリスマ性はちゃんと引き継がれていますね。

利用されるカリスマ性

転生制度は信者集めのために作られたものだ、という説もあります。

宗教には、キリストやブッダのようなカリスマが存在します。

水の上を歩く、ヤリを花びらに変えるなどの奇跡を起こし、反発する者もオーラに圧倒されてひれ伏してしまうカリスマに魅せられて、信者が集まるのです。

しかし、カリスマも人間ですからいつかは死にます。

そのとき後継者が普通の人間では有り難みが薄れ、信者が離れて行ってしまうのが問題になります。

そこで、誰かを生まれ変わりに仕立てれば、先代のカリスマ性を維持し、信者数をキープできるというわけです。

ダライ・ラマ制度の始まりが1578年と最近であることから、「後から作ったんじゃないの?」との指摘があるんですね。

しかし、14世によれば、化身の起源はダライ・ラマ1世が最初ではなくブッダの時代にまで遡るのだそうです。ということは何回転生したのでしょうか…?

ダライ・ラマ15世をどうするのかモメているらしい

祈りを捧げるチベット仏教徒

人気ばつぐんのダライ・ラマ14世は現在、83歳の高齢です。

これまで通りだと、亡くなった後に転生した子どもを探しだして後継者にする、という手順になります。

ところが、これには大きな問題があります。

話すと長くなるので端折りますが、チベットは元々はひとつの独立した国でした。

それが第二次大戦後、中国に乗っ取られて中国の一部扱い「自治区」にされてしまいました。

チベットを弱体化させたい中国政府は、政治に意見を言うチベット人を逮捕し、住民には生活していけないほどの重税を課すなど、ボコボコにいじめてきました。

人権無視の弾圧政策に、とても住んでいられず15万人が故郷を捨てて周りの国に逃げました。

こうした歴史を背景に、亡命した人を含むチベット社会では、ダライ・ラマの転生制度を見直す議論が起こっています。

ダライ・ラマの後継者認定には年単位で時間がかかります。

その間に中国政府が勝手に15世を指名して、政治利用されてることをチベット側は危惧しているのです。

実際、過去にもパンチェン・ラマという高僧の生まれ変わりの子どもが政府に誘拐され、別の子どもが擁立される事件も起こっています。

中国政府に都合の良い候補者がダライ・ラマの後継者にされてしまったら、チベットは中国の思いのままにされてしまうでしょう。

そうさせないために、転生制度はやめにしてダライ・ラマ14世が生きているうちに15世を指名しておきたいのです。

人気のあるうちにやめるべきだ。弱いダライ・ラマになったら制度を傷つけることになる
-ダライ・ラマ14世

制度としての転生はなくなっても、ダライ・ラマの魂はまた転生して人間に生まれてくるのでしょうか?

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輪廻転生はウソなの?

こんな事務的な話を聞いてしまうと、輪廻転生なんてウソじゃないか、と思ってしまいますよね。

もちろん精神世界の話なので、本当に死後の世界があるのか、ダライ・ラマ法王はホンモノの生まれ変わりなのか、なんて確認のしようがありません。

どんなに議論を重ねても、完全に死んであの世から帰ってきた人はいませんからね。

そもそも「輪廻転生はあるか、ないか」という議論はそれほど意味がないんです。

確かなことは、輪廻転生の信仰のおかげで多くの人が生きている間を充実して過ごしている事実だけです。

「今、人間界で悪いことをすると来世でイノシシになってしまう」と信じるからこそ、解脱を目指します。

人が見ていないところでも良い行いをし、大変な困難があっても「これは魂の修行だ」と思って向きあえます。

何よりの証拠は、中国からの弾圧と粘り強く戦うチベットの人々の姿です。

死の恐怖から救済してくれるチベット仏教

チベット仏教の輪廻の考え方は、一度も経験したことのない「死」の恐怖もやわらげてくれます。

死は「苦しみからの解放」であり、光に包まれて一体になり幸せしかない世界に解脱することです。

もしも本当にそうなら、死ぬことはあまり怖くなくなるでしょうね。

輪廻転生とは、幸せに生き、幸せに死ぬための1つの「設定」のようなものです。

必ずしも輪廻を信じなくても、「天国に行ける」とか「千の風になる」、「土に還る」などなど、あなたが安らかでいられるように、好きな設定を採用すればいいのです。

まとめ

  • チベット仏教の教えでは、人の魂は永遠に生まれ変わり続けています。
  • この世はすべて「苦しみ」の世界。生きていたときの行いによって6つの世界に転生します。悟りを開き、転生をやめて解脱するのが仏教の修行の目的です。
  • たまに悟りを開いても解脱せずに人間界に戻ってくる人がいて、生命がみんな解脱できるように助けます。ダライ・ラマもその一人。
  • チベットは以前は国だったけど、中国に乗っ取られ、住民は今も抑圧をうけています。
  • ダライ・ラマ14世の転生が中国政府の介入を受けることが懸念されています。
  • 転生は本当かどうかは確認できないけれど、苦しみや死と仲良くし、幸せに生きる知恵です。

輪廻転生を手がかりに、幸せな生き方・死に方をしたいものですね。

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