年収と幸福度にはどのような関係があるのでしょうか?
「幸せはお金じゃない」と思いたいですが、「貧すれば鈍する」とか「金の切れ目が縁の切れ目」などという言葉もあります。
収入と幸せの関係、「幸福はお金で買えるのか?」というテーマについて、様々な調査研究をまとめて考察してみました。
目次
世帯年収と幸福感―内閣府調査より
年収と幸福度は比例する
収入の多少は幸福感に関係があるのでしょうか?
2011年度に内閣府が「平成23年度国民生活選好度調査」を行っています。
「現在、あなたはどの程度幸せですか。『とても幸せ』を10点、『とても不幸』を0点とすると、何点くらいになると思いますか。」という質問に対する回答のグラフがこちらです。
内閣府「人々の幸福感と所得について」
明らかに、世帯年収が高いほど幸福度が高くなっていますね。
特に年収1000万円未満までは綺麗な相関関係のグラフが見られます。
やはり、というべきでしょうか、幸せはお金次第だったのです。
幸せの判断基準は?
ちなみに、この調査では幸福感の判断材料もアンケートが取られています。
幸福感を判断するのに重視する基準としては、「自分の理想との比較」や「将来への期待・不安」が挙げられました。
また、幸福感を判断するのに重視する事項は、家計の状況や健康状況、家族関係、精神的なゆとり、などが主になっています。
確かに年収200万円未満では生活するのに精一杯ですから、欲しいものも変えず、理想の自分とは程遠いかもしれません。
将来のための貯金もできなければ不安もつのります。
家計を切り詰めて栄養のない偏った食事になれば健康も悪くなるし、心にゆとりがなくなって家族とギクシャクするのも当たり前、と言えます。
お金は幸せになるために最も確実な方法なのです。
グラフの右側に注目
しかし、先ほどのグラフをよく見てみてください。
1000万円以上では所得が増えても幸福度は頭打ちになってるのにお気づきでしょうか?
年収200万円から600万円に増えると幸福個は1点以上上がるのに対し、年収1000万円から1400万円に増えても、幸福度は変わらず。むしろ微減しています。
400万円あったら新車の1台も買えるのに、なぜ幸福度は上がらないのでしょうか?
これは経済学で「限界効用の逓減(ていげん)」と言われる現象です。
例えば、お腹が空いているときに食べるご飯の1口目はとっても美味しいですが、2口目、3口目となると最初の1口目ほどの感動はなくなりますね。
同じように、お小遣いが1万円から2万円にアップしたらめちゃくちゃ嬉しいですが、100万円が101万円に増えてもあんまり変わらない気がすることでしょう。
このように、お金の単位が大きくなるほど、お金が増えたときの幸せ度(効用)の変化は小さくなっていき、あるレベルを超えると幸せ度はほとんど増えなくなります。
そして、どうやら年収1000万円周辺に、お金で幸せが買える限界値がありそうです。
お金で幸せを買える限界
年収が幸福度を上げるのは年収900万円まで
プリンストン大学の心理学者、ダニエル・カーネマン教授の研究によると、感情的幸福は年収7万5000ドル(およそ900万円)までは収入に比例して増えますが、それを超えると比例しなくなるのだそうです。
アメリカと日本という違いがあるにもかかわらず、この説は内閣府の調査データともピッタリ合致していますね。
お金を得るためには、犠牲が伴うことがあります。
例えば、お金を稼ぐために仕事が多忙になりすぎたり、プレッシャーが大きくなったりもするでしょう。
年収900万円ぐらいがほどほどに稼いで幸福を感じられる「コスパの良い」年収のようです。
お金で買える幸せの飽和値
アンドリュー・ジェブらは幸福を3種類に分けて所得との関係を研究しています。
1つ目は、楽しみ、笑顔、笑いなどポジティブな感情をもたらしてくれる所得のことで、約660万円を超えるとそれ以上は所得が増えてもポジテティブな感情は頭打ちになります。
2つ目は、ストレス、怒り、不安などネガティブな感情がわかない幸福。飽和地は約550万円です。
3つ目の幸福は、人生の全体的な満足度です。飽和地は約1210万円と、感情的な幸福度に比べてお高め。
研究チームは、人は感情的な安定が得られると次に自分の欲求を満たす行動にでるのだろうと推測しています。
頭打ちの幸福度、ヘドニックトレッドミル現象
お金によって与えられる喜びが長続きしないことは、「ヘドニックトレッドミル」という現象によっても示されています。
ヘドニックトレッドミルとは、「快楽のランニングマシン」というような意味です。
ランニングマシンでどれだけ走っても、元の場所からは動くことはなく、目的地にたどり着くことはありません。
ずっと欲しかったものを買って手に入れると一時的に幸福感は高まりますが、すぐに慣れてしまい、また次の何かが欲しくなります。
永遠に幸福という目的地にたどり着かないランニングマシンのようだ、ということでこの呼び名が付けられました。
お金があって、こんないい暮らしをして、何でも欲しいものを買って、しょっちゅう海外旅行にも行けたらどんなに幸せだろう、と思うのに、いざお金がたくさん入ってくると一瞬で贅沢に慣れて「なんだ、こんなものか」となってしまい、幸福は長続きしないのです。
幸福なお金の使い方とは?
ここまでを整理しましょう。
- 収入と幸福度はある一定ラインまでは比例する
- しかしそれを超えると飽和してそれ以上の幸福は得られない
- 贅沢で得られる幸せは長続きしない
でも、せっかく頑張って稼いだお金なんですから、めいいっぱい幸せを買いたいものですよね。
幸せなお金の使い方を、マイケルノ・ートン氏が提案しています。
マイケル・ノートン氏の調査
ハーバード大学の准教授、マイケル・ノートン氏は「お金の使い方」が幸福度にもたらす影響を実験しました。
その実験の方法はこうです。
カナダのブリティッシュコロンビア大学の学生にたちに、「今、どのくらい幸せですか?」と質問し、5〜20ドルのお金が入った封筒を渡します。
封筒の中にはメモも入っていて、ある学生には「午後5時までに、このお金を自分のために使って下さい」と書かれた紙が渡されました。
別の人の封筒には、「午後5時までに、このお金を誰かのために使って下さい」と書いた紙が入っています。
自分のためにお金を使ったグループは、イヤリングや化粧品、スターバックスなど自分の欲しいものを買いました。
誰かのためにお金を使ったグループは、姪っ子にぬいぐるみをプレゼントしたり、ホームレスにお金をあげたり、誰かにスターバックスを買ってあげたりしました。
そして、ふたたび「今、どれくらい幸せですか?」と尋ねたところ、他の人にお金を使った人は、自分のためにお金を使った人よりも幸せになっていました。
また、使う金額は5ドルでも20ドルでも関係なく、自分ではなく他の人にお金を使うことで幸せ度が上がっていたのです。
他の人にお金を使って幸せになった体験談
人のためにお金を使うと自分が幸せになる感覚は、私自身も体験しています。
私は、大学を卒業して就職して初めて給料をもらったとき、週末でちょっと帰省して両親たちを食事に連れていきました。
というのも、父親がシェア精神のある人で、自分の小遣いで買った宝くじが当たると家族みんなに分けてくれたり、ボーナスがでると小遣いを多めにくれたりする人だったからです。
外に出ていたので、別に家にお金を入れることもないのですが、何となく独り占めしているような気がして、1回くらいは…と家族にお金を使おうと思ったのでした。
高級なレストラン…ではなく、ふつうの中華料理屋だったのですが、父も母も涙ぐんで喜んでくれて、あとで親戚にも自慢してたようです。
帰るときには、私が食事代に使ったお金以上に大量のお土産を持たされました。
そんなに喜んでくれるんなら良かったなあと、いい思い出になっています。
初任給では、自分のためにも新しい洋服とかを買ったはずなのですが、今となってはどんな服だったのかも思いませません。
自分のために使ったお金は幸福感が一瞬だけで終わっていまい、そこから何も起こりませんが、周りの人のためにお金を使うのは素晴らしい体験としていつまでも幸せが続きます。
ビジネスとは人のためにお金を使い、自分も受け取ること
ノートン氏は、「他の人にお金を使うことで自分に使うよりも大きな見返りがある」として、寄付を勧めています。
日本でも災害の義援金など寄付はさかんに行われていますね。
ですが、寄付ではない普通のビジネス活動にも「人のためにお金を使う」という意味があります。
ビジネスと言うと、自分たちのためにお金を儲けているイメージがあるかもしれません。
たとえばラーメン屋を始めたら、1杯千円とかでラーメンを売ってお金を儲けるわけですから、どうしてそれが人のためにお金を使うことになるの?と思われるでしょう。
しかしよく見てみると、テナントの家賃を払って、設備を揃え、食材を仕入れるためには先にお金を使っています。
わざわざそんなことをするのは、人々にラーメンを食べて幸せになってもらいたいから、でしょう。
では、なぜ無償でやらないのか。
それは、皆に無料でラーメンをご馳走していたらどうなるでしょうか?
もちろん無料で食べられたら最初は皆が喜びます。
でも、そのうちお金がなくなって材料を仕入れることも家賃を払うこともできなくなり、ラーメンを提供できなくなってしまいます。
ちゃんと代金をもらった場合、ラーメン屋が繁盛すればお金がいっぱい集まります。
今度は新しい店舗を増やしたり、従業員を雇ったりするのにお金を使えば、もっとたくさんの人にラーメンを食べてもらって喜んでもらえて、自分も幸せです。
ビジネスとは、人のためにお金を使って幸せを与えながら、自分もお金と幸せを受け取れる、持続可能な方法なのです。
お金をタンス預金にして大事に取っておくよりも、ビジネスに投資した方が増えるのは、ざっくり言うとこういうわけです。
自分が生活するため、贅沢するためにはそんなに何億円も要りませんが、誰かのため、世の中のためにこんなビジネスがあったら良いな、と思えばいくらでもお金が必要になります。
そうやってビジネスにお金を使いつづければ、人のためにお金を使う幸せを金額の上限なく感じられるのではないでしょうか。
自分のために使うお金も、人のためにする
自分の生活や楽しみのためにお金を使うときも、心の持ちようによってはそれを「誰かのため」にすることができます。
たとえば、食べ物を買う時に自分の食欲を満たすために何でもかんでも好きなものを選んでいたら、それは自分のためです。
しかし、いい食事をして健康を保ち、より良い仕事をしようとか、家族と楽しく過ごそうとか「誰かのため」という目的が入ってくれば、食費は「人のために使うお金」になります。
服や化粧品を買うのも、自分がよく見られたいとか、注目を浴びたい、と思ったら自分のためですが、周りの人のために清潔感を保とう、パートナーに喜んでもらうために美しくありたい、自分の気分を上げて仕事のパフォーマンスを上げたい、ということならば人のためですね。
私は、このような考え方をするようになってから、お金を稼ぐことにもお金を使うことにも罪悪感がなくなりました。
以前は、お客さんからお金を払ってもらうときも、そのお金で自分が欲しいものを買うときも、どこか悪いような気がしていました。
高いと思われてるんじゃないか、贅沢なんじゃないか、と。
しかし、今はお金を使う時は必ず、少しは「誰かのため」になるように考えて使っています。
たとえば最近買ったものにKindleペーパーホワイトがあります。
Kindle本はスマホやパソコンでも読めるので、わざわざ端末を買うのはちょっと贅沢なんじゃないかな? とも考えました。
でも、Kindleはスマホよりも画面が大きくて、ディスプレイも目が疲れないようになっているし、電池も1度の充電で1週間使えるといいます。
もしこれを買えば、出先で本を読む時にスマホの充電を気にする必要がなくなりますし、パソコンで執筆しながら本を参照するときにも画面が別れるので便利です。
なくてもなんとかなるけれど、あったらもっといい仕事ができそう。
というわけで、ビジネスの投資と思いKindle端末を購入しました。
こんな感じで、仕事に役立つもの、家族や友人など周りの人にも喜んでもらえそうなものには、思い切って投資することにしています。
ノートン氏が言うように、人のためにお金を使うことが結局は自分も幸せになれる、というのを実感できます。
年収と幸福度まとめ
個人の収入と幸福度は、年収1000万円前後までは比例し、それより増えても頭打ちになることがいくつかの研究で明らかになっています(限界効用の逓減)。
自分の贅沢のためにお金を使っても、幸せは長続きしません(ヘドニックトレッドミル現象)。
誰かのためにお金を使うと幸福度が上がります。
お金がいっぱい手に入ったら、周りの人にプレゼントしたり、寄付をしたり、世のため・人のためになるビジネスに投資をしたりすると、幸せが長続きするようです。
また、自分の生活のためにお金を使うときも、「それが誰かのためになるように」という発想で使えば、より幸福を味わうことができます。
たっぷりお金を稼いで、たっぷり人のために使って幸福になりましょう!
《参考文献》
『幸せをお金で買う 5つの授業』エリザベス・ダン、マイケル・ノートン、古川奈々子
『幸福の資本論』橘玲
「幸せ」はお金で買えるが“限度額”があり、先進国ほど相場も高かった:米研究結果
「幸せはお金で買えます。正しく使えば」 あなたの人生観を変える、お金と幸福のハナシ
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。管理人の佐藤想一郎と申します。
私が執筆しました、レポート『Cycle(サイクル)』では、今まであまり語られることのなかった〝引き寄せの法則の、もう1つの側面〟について書いています。
・「ワクワク」のダークサイド(暗黒面)とは
・9割の人が見落とす〝引き寄せられない〟根本原因
・想像すら超えた未来を引き寄せる、運命を変える秘訣
といったことにも触れています。
よろしければ読んでみてくださいね。
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