春。4月が年度替わりの日本では、出会いと別れの季節です。
春を代表する花である桜は、みなさんにとっても特別なものではないでしょうか。
古くから和歌に詠まれ、現代も「お花見」は行事や観光の一大イベント、桜をモチーフとした小説やJ-Popの歌もたくさんありますね。
桜は、日本人の精神性に深い関わりがあり、スピリチュアル的に大きな意味とパワーを持っています。
今回は、そんな「桜」についてまとめてみました。
お花見にお出かけになる前にお読みいただくと、より味わい深く楽しんでいただけると思います。
目次
桜の語源と歴史からスピリチュアルな意味をひもとく
古事記の神様、木花咲耶姫(このはなさくやびめ)さま
日本の歴史で初めて桜らしき記述が登場するのは、『古事記』のコノハナサクヤビメという女神の話のところです。
コノハナサクヤビメは、山の神オオヤマツミの娘で、イワナガヒメという姉がいます。
父・オオヤマツミは二人の娘をニニギノミコトの妻にさせたいと思っていました。
ニニギノミコトは、天照大神の孫で、皇室のご先祖様です。
イワナガヒメは、岩のような永遠の命を、コノハナサクヤビメは天孫に桜の花がさくような繁栄をもたらすはずでした。
ところが、イワナガヒメは人外の不細工であったためニニギノミコトは結婚を拒否。妹だけが結婚した結果、天皇の寿命は短くなって普通の人間ぐらいになってしまいました。
さて、コノハナサクヤビメは結婚後に即妊娠し、ニニギノミコトから浮気を疑われます。
「あなたの子どもなら何があっても生まれるはず!」と自分のいる産屋に火を放ち、無事に火の神様たち三柱を出産。
安産の神様として、祀られるようになりました。
コノハナサクヤビメ、ワイルドですね。母は強し!
というわけで、桜には神々の時代から「子孫繁栄」のイメージ・スピリチュアルなパワーがあったようです。
桜の語源
「桜」という言葉が登場するのは、奈良時代の『万葉集』です。
まずサクラの「サ」という字ですが、これは「サ神」を表しており、これは田んぼの神様と言われています。
次に「クラ」というのは、何かというと神様が鎮座する、「台座」のことであり、桜の花が咲くということは、田んぼの神様が山から下りてこられたと考え、神様を迎えるために、食物や酒をお供えしてお祝いしていました。また当時は桜の花が咲く頃が田植えの時期と考えられていたようです。
万葉集には梅を詠んだ歌が110首もあるのに対して、桜は43首だけ。桜は「神聖な木」で、花見といえば梅が主流だったようです。
万葉集には、たとえばこんな風に読まれています。
梅の花、咲きて散りなば、桜花(さくらばな)、継(つ)ぎて咲くべく、なりにてあらずや
意味: 梅の花が咲いて散ったら、すぐに続いて桜(さくら)が咲きそうになっているではないですか。
天平2年1月13日、大伴旅人(おおとものたびと)の邸宅で催された宴会のときに詠まれた歌の一つです。
「梅」の花見の宴会に集まったら、もう散ってしまったけど、桜でもいいじゃないですか〜、みたいなシチュエーションでしょうか。現代とは逆の感覚ですね。
平安時代に下ると、桜と梅が逆転し「花見といえば桜」が浸透し、今に至るまで時代の人々に愛でられてきました。
桜の花言葉は「精神の美」「優雅な女性」
今度は、桜の花言葉を見てみましょう。
桜全般の花言葉
純潔・優雅な女性・精神美・淡白・心の美しさ
さらに、品種ごとにひとつひとつ花言葉があります。
ソメイヨシノの花言葉
優れた美人・純潔
八重桜の花言葉
優れた教養・おしとやか
しだれ桜の花言葉
優美・ごまかし
寒桜の花言葉
気まぐれ・あなたにほほえむ
山桜の花言葉
純潔・高尚・淡白・美麗・あなたにほほえむ
彼岸桜
心の平安・精神の美
品種によって、見た目の姿や咲き方の特徴、イメージが表れていますね。
次に、桜の主な花言葉になっている「精神の美」に着目して、日本人が桜に寄せる精神美のイメージを見てみましょう。
日本人の精神美としてのイメージを持つ桜
生と死の象徴
のどかな春に花を咲かせ、あっという間に散っていく…。
「桜は七日」または「花七日」という慣用句があるように、桜の花の寿命はわずか七日ほどの短い命です。
そんな桜は生と死両方を象徴し、日本人の死生観に大きく結びついています。
桜は「生」と「死」の両方のメタフアーがある。
春に咲く桜は大地の命の蘇る春、命の生のシンボルだ。
一方、桜の意味の中においても一番現代の日本人に知られているのは桜の散ることと潔い死との隠喩的関係だ。
昔の日本人の考えにおいては、生と死は必ずしも対立する概念ではなく、死者の魂は蘇ると信じられていた。
男女を結び付けるのと同じように、桜は生と死の連なりのメタフアーであったかもしれない。
厳しい冬を乗り越えて花を咲かせる生命の力強さ、そして散りゆき冬を迎える…。
生も死も永遠ではなく、何度も繰り返されていくもの…桜にはそんなスピリチュアルメセージを教えてくれます。
武士道、美しい散り際
とりわけ桜の美しい散り際、潔い死のイメージは、『武士道』の精神を象徴するものでもあります。
武士の世になって、咲いてはすぐに散る桜は、現世に執着せず、義のために命を捧げる武士の生き方の象徴とされた。
「花は桜木、人は武士」とは、この理想を謳っている。
ここで思い起こされるのは、アメリカ映画『ラスト・サムライ』の結末シーンである。
渡辺謙扮する「勝元」(西郷隆盛を思わせる大将)が戦いに負け、切腹する際に頭上から舞ってくる桜の花びらを見て、「Perfect! It’s all perfect(見事だ)」ともらす。
勝った官軍側はみな、勝元の切腹に、ひざまづき、ひれ伏す。日本の武士道に対する深い敬意の籠もったシーンである。
(中略)
武士道を記した古典、山本常朝の『葉隠れ』には「武士道とは死ぬことと見つけたり」という有名な一句がある。
主君のためにはいつでも生命を投げ出すのが武士道であり、桜の潔く散る様こそ、その象徴だと見なされた。
武士が主君や領民のためでに命を張って戦ったように、太平洋戦争では兵士たちが国を守るために命がけで戦いました。
華々しく散る様から、特攻機は『桜花』と名付けられ、末期の特攻隊員たちの間では軍歌『同期の桜』が流行しました。
貴様と俺とは 同期の桜
離れ離れに 散ろうとも花の都の 靖国神社
花の梢に 咲いて会おう同期の桜
桜の花ひとつひとつは散っても、大きな幹は生きづづけ、また次の年に新たな花を咲かせます。
国全体のために身を捧げる是非はともかく、戦前から戦時中までの日本人精神性の高さが感じられます。
もののあはれ、趣
桜には日本人特有の「あはれ」「趣(おもむき)」といった美意識も投影されます。
花は盛りに、月は隈くまなきをのみ見るものかは。
(桜の)花は盛りのさまだけを、月は曇りのないのだけを見るものであろうか、いや、そうではない。雨に対むかひて月を恋ひ、垂れこめて春の行方知らぬも、なほあはれに情け深し。
雨に向かって月を恋い慕い、簾を垂れて(家の中に)ひきこもって春が暮れてゆくのを知らないでいるよりも、やはりしみじみとして趣が深いものだ。咲きぬべきほどの梢こずゑ、散りしをれたる庭などこそ、見どころ多けれ。
今にも咲きそうな頃の梢、花が散ってしおれた花びらが点々とある庭などにこそ、見る価値が多いのである。
完ぺきで派手なものだけでなく、未完成のもの、壊れゆくものなど不完全さをしみじみ愛でる「もののあはれ」という美意識も、生きる者は死んでいく「無常観」が土台となっています。
出会いと別れの季節、春の記憶を想起するもの
現代の私達にとっては、桜は春の出会いと別れを想起させる特別な花です。
さくら舞い散る中に忘れた記憶と 君の声が戻ってくる
桜散る頃 出会い別れ
花びら舞い散る 記憶舞い戻る
さくら/ケツメイシ
さくら ひらひら舞い降りて落ちて 揺れる想いのたけを抱きしめた
君と春に願いし あの夢は今も見えているよ さくら舞い散る
SAKURA/いきものがかり
春は進学や就職の出会いと別れをそれぞれに体験しますが、そこに共通して桜の風景があります。
「桜」を題材にした歌が多くの人の心を動かすのは、共通するイメージを通して自分の人生を投影しやすいためでしょう。
日本人が一体感を持つパワー
桜は日本人の心をまとめて一体感を持たせるパワーも持っています。
桜前線と共に 南から北へと順に
響かす爆音武器に 最高の快感君に
風を起こしながら縦断 最後に手にする栄冠キリキリマイ/ORANGE RANGE
お花見シーズンは、「花見だ」「場所取りだ」とお祭り騒ぎで、みんな今か今かと蕾の様子を眺め、週末の天気予報と桜の開花予報が注目されます。
日本人は地震や洪水・大雪などの自然災害で集団意識や助け合いの精神を発揮しますが、「祭り」も日本人の心を1つにするイベントです。
桜の季節は日本列島がみんなお祭り状態となり、不思議な一体感に包まれます。
人の精神を狂わせる桜
桜のスピリチュアルなパワーが強すぎるために、おかしくなってしまう人もたまに表れます。
在原業平もその一人だったようで、こんな和歌を詠んでいます。
世の中にたえて桜のなかりせば春のこころはのどけからまし
歌の意味
この世の中にまったく桜がなかったのならば春の人の心はのんびりするだろうに。素直に平穏を望んでいるような歌であるが、反対に春の間に心をわずらわされる桜への愛着が切なく表現されている。
桜の花が美しすぎて恐怖を覚えてしまう人たちも…
桜の樹の下には屍体したいが埋まっている!
これは信じていいことなんだよ。何故なぜって、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。しかしいま、やっとわかるときが来た。桜の樹の下には屍体が埋まっている。これは信じていいことだ。『桜の樹の下には』梶井基次郎
近頃は桜の花の下といえば人間がより集って酒をのんで喧嘩していますから陽気でにぎやかだと思いこんでいますが、桜の花の下から人間を取り去ると怖ろしい景色になりますので、能にも、さる母親が愛児を人さらいにさらわれて子供を探して発狂して桜の花の満開の林の下へ来かかり見渡す花びらの陰に子供の幻を描いて狂い死して花びらに埋まってしまう(このところ小生の蛇足だそく)という話もあり、桜の林の花の下に人の姿がなければ怖しいばかりです。
『桜の森の満開の下』坂口安吾
たしかに、バンと満開に咲いた桜には、圧倒されるような、畏怖のようなもの感じることがありますね。
スピリチュアルなパワーの強い桜、心の状態が不安定なときはマイナスに作用することがあるのでご注意を。
桜のスピリチュアルなパワー・まとめ
まとめると、桜のスピリチュアルな意味とは…
- 桜の神様、木花咲耶姫は安産・子孫繁栄の神様
- 「さくら」の語源は田んぼの神様、神聖な木とされていた
- 花言葉は、精神の美・優雅な女性など
- 生と死の象徴であり、無常観や武士道精神に繋がっている
- 蕾や散った花に「もものあはれ」「趣き」の精神
- 出会いと別れの象徴として心を動かす
- 一種の「祭り」として日本列島全域に一体感をもたらす
- あまりの美しさは、時に人を狂わせる
今年のお花見は、桜に日本人の精神性を感じながら味わって見てみてください!
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。管理人の佐藤想一郎と申します。
私が執筆しました、レポート『Cycle(サイクル)』では、今まであまり語られることのなかった〝引き寄せの法則の、もう1つの側面〟について書いています。
・「ワクワク」のダークサイド(暗黒面)とは
・9割の人が見落とす〝引き寄せられない〟根本原因
・想像すら超えた未来を引き寄せる、運命を変える秘訣
といったことにも触れています。
よろしければ読んでみてくださいね。
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