あなたは『星の王子さま』を読んだことはありますか?
本の名前は知っているけど、実際に読んだことはないなぁという人が多いのかもしれません。
この本は200以上の国と地域の言葉に翻訳されている、ロングベストセラーの一冊なのです。
なぜこの本がこんなにも人々に愛されているのでしょうか。
子どもの頃に読んだことがあるという人でも、結局どんなストーリーか覚えていないという人も多いようですね。
この本の作者アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリは、子どもに向けた児童文学としてこの物語を綴ったようなのですが、子どもが読むにしてはメタファー(比喩)が多用されていて、理解するのが難しいのだと思います。
一方、大人になってから読むと、比喩に込められた意味が理解でき、グサッと一突きされるような鋭さもありながら、心が洗われるような清らかさも感じられるようにもなります。
子ども対大人という二項対立のような図式がみられ、男の子の王子さまが6つの星で出会った大人たちと問答をする場面は、反面教師的な意味で深く考えさせられるものです。
登場人物の「王子さま」の持つ何にも汚されていない純粋な眼差しを通すと、大人の社会は滑稽で仕方がないのです。
また王子さまが変わるきっかけとなったキツネとの会話は、多くの人に愛されています。
この本は、私たち大人がいつの間にか純粋さを失ってきたことにハッと気づかせ、「人間にとって本当に大切なものとは何か」を考え直すきっかけを与えてくれるような、大きな影響力を持っています。
いつ読んでも、私たちに「こんなことが書いてあったのか!」と新鮮な気づきと、励まし叱咤激励を与えてくれることでしょう。
物語のいたるところに名言が散りばめられてはいるのですが、今回は特に「生きることがちょっぴり辛くなってしまった時」「人間関係に疲れた時」などに思い出したい、心を潤す言葉を選んでみました。
目次
まずはあらすじから
『星の王子さま』のそもそもの主人公は、王子さまではないことをあなたはご存知でしょうか。
小さな1人乗りの飛行機で旅をしていた「僕」が砂漠で不時着した時から話がはじまります。
作者のサン=テグジュペリ自身もパイロットで、多くの冒険を経験しているようですね。
砂漠の真ん中で「僕」が途方にくれていると、ある不思議な男の子に出会います。
一軒家よりも少し大きいぐらいの小さな惑星に住む「星の王子さま」です。
彼はこの小惑星で、たった1本のバラを大切に育てていました。
そのバラが次第に高慢になりわがままを言いいじわるになったことに嫌気が差し、バラと喧嘩をした「王子さま」は、小惑星から逃げ出してしまったのでした。
王子さまはそこから6つの惑星を旅して、次の人々に出会います。
1つ目…命令ばかりをして偉そうにしている王様
2つ目…自分が褒められることばかりを考えているうぬぼれや
3つ目…酒を飲むことを恥じ、それを忘れるために飲む呑み助
4つ目…自分の所有する星の数を、忙しそうにひたすら数えるビジネスマン
5つ目…1分間に1度ずつ火をつけたり消したりしている点灯夫
6つ目…書斎に閉じこもっていて、実際の土地を見たことがない地理学者
すごい皮肉たっぷりなのがお分かりいただけますか(笑)?
そして最後に地球にたどり着いたところ、キツネや地球のバラたち、そして「僕」と出会います。
「僕」が故障した飛行機を直している間、「王子さま」は様々な惑星で出会った人や、地球で出会ったキツネや惑星に残してきたバラについてとうとうと語り出すのです。
その長い長いお話を聞きながらついに飛行機の修理が終わると、王子さまの惑星がちょうど真上にくるころを迎えます。
「僕」と「王子さま」の別れが訪れたのです。
「僕」はこの王子との美しく悲しい思い出を忘れないための回想録として、この物語を書いたのでした。
人を愛することが分からなくなった時に読みたい言葉
だれかが、なん百万もの星のどれかに咲いている、たった一輪の花がすきだったら、その人は、そのたくさんの星をながめるだけで、しあわせになれるんだ。そして、<ぼくのすきな花が、どこかにある>と思っているんだ。~王子さま~
誰かを愛することは、今まで何気なく眺めていた世界が急に色づき始め、喜びにあふれる世界へと変えてしまう力をもっています。
たとえ近くに存在しなくても、王子さまのように心の一輪の花を大切に思う気もちは、世界を輝かせることにほかなりません。
愛することの尊さが分かる言葉です。
そりゃ、もう、あたくし、あなたがすきなんです。あなたがそれを、ちっとも知らなかったのは、あたくしがわるかったんです。でも、そんなこと、どうでもいいことですわ。あたくしもそうでしたけど、あなたもやっぱり、おばかさんだったのよ。
そう、ぐずぐずなさるなんて、じれったいわ。もうよそへいくことにおきめになったんだから、いっておしまいなさい、さっさと!
~バラ~
ぼくは、あの時、なんにもわからなかったんだよ。あの花のいうことなんか、とりあげずに、することで品定めしなけりゃ、いけなかったんだ。ぼくは、あの花のおかげで、いいにおいにつつまれていた。明るい光の中にいた。だから、ぼくは、どんなことになっても、花から逃げたりしちゃいけなかったんだ。ずるそうなふるまいはしているけど、根は、やさしいんだということをくみとらなけりゃいけなかったんだ。
~王子さま~
このバラはまるで自分のようだなと心が締め付けられる思いがします。
いじわるをするという形で王子さまに甘えてはいるのですが、素直な愛情表現ができないために誤解させてしまうのです。
バラはきっと怖いのではないかと思います。
王子さまが自分のことを本当に愛してくれているのかどうか。
ですから、つい自分を大きく見せようとしたり、試すようなことをしたりしてしまうのかもしれませんね。
王子さまもバラの表面的な言葉に振り回されて、本当は弱さを隠しているのだということを見抜くことができません。
バラは王子を愛するがゆえに、素直になれないだけだということを。
王子さまは、バラの嫌なところばかりが気にかかりついには逃げてしまいましたが、バラと距離をとったことやキツネとの出会いのお陰で、やっとバラの本心や愛することについて気づいていくのです。
きみのバラをかけがえのないものにしたのは、きみが、バラのために費やした時間だったんだ。
~キツネ~
大切な関係を築くためには、丁寧に心を込めて接しなければならないということなのです。
忍耐強さが必要とされるのかもしれませんが、それを超えたところに本当の愛が生まれるのかもしれませんね。
周りと競うことに疲れた時に読みたい言葉
ほめることばでなくては、うぬぼれ男の耳には、けっしてはいらないのです。
王子さま:感心するって、それ、いったい、どういうこと?
うぬぼれ男:感心するっていうのはね、おれがこの星のうちで、一ばん美しくって、一ばんりっぱな服を着ていて、一ばんお金持ちで、それに、一ばん賢い人だと思うことだよ。
(省略)王子さま:でも、人に感心されることが、なんで、そうおもしろいの?」
周りから見るとこんなにも滑稽なことはないのに、ひたすら自分が一番すごいという妄想の中に生きている人は結構見かけるのではないでしょうか。
ここまでとはいかなくても、心の中に「他の人よりも良く見られたい」「認められたい」という思いは誰しもありますよね。
この極端なキャラクターを見ると、周囲の人と自分を比較して上下を判断して生きることが、本当に無意味であることに気づかされます。
王子さまの「関心されることが、なんで、そうおもしろいの?」は、自分の虚栄心をリセットさせてくれる魔法の言葉のような気がします。
人に勝とうとすると、人の粗探しをしたり上から目線でジャッチしたりするようになる上に、そんな自分も嫌になります。
人の許せない面を見た時には自分の弱さと重ね合わせ、人の美しい面を見た時は尊敬の念を抱きながら生きれば、温かく幸せに生きられるようになるのではないかなぁという気がしています。
所有することに執着のある時に読みたい言葉
これは、多くの所有している星の数ばかり数えている実業家の星に行った時のことです。
王子さまが星を持っていて何の役に立つのかを聞くと、実業家は金持ちになってまた星を買うためだと話します。
そうして持っている星の数を紙の上に書いて、鍵をかけ引き出しに入れておくというのです。
それを聞いた王子さまは、こんなことを話します。
「ぼくはね、花を持ってて、毎日水をかけてやる。火山も三つ持ってるんだから、七日に一度すすはらいをする。火を吹いていない火山のすすはらいもする。いつ爆発するか、わからないからね。ぼくが、火山や花を持ってると、それがすこしは、火山や花のためになるんだ。だけど、きみは、星のためには、なってやしない……」
~王子さま~
多くの人が、お金や物に対する執着を持っているために、悩み苦しんでいます。
この、星とお金のお話を大人になってから読むことで、物語の内容と現実世界を冷静に重ね合わせて見られるようになりました。
何かを失うことへの不安感がとても大きくなると、執着となってしまい、なぜそれを手にしなければいけないのかということを見失います。
現代では、何のために所有するのか自体が明確ではないまま、不安感や情報操作から次々と物を所有させられています。
所有していなければ、人より何か劣っている気にさせられるほど、所有することへの圧力がかけられている時代なのです。
しかしよくよく考えてみると、多くの物やお金を持っている日本人の幸福度が低いのはなぜなのでしょうか。
物やお金を所有していない人や国や部族などの方が、とても幸福に暮らしているのを見ると、幸福の本質は所有すること以外にありそうだと気づかされます。
冷静に考えれば分かるのですが、本来お金はただの物々交換の道具に過ぎません。
私たちは、このお金に価値を置きすぎているのではないでしょうか。
確かに、あれば自分の欲を満たしてくれるものですし、安心感もあります。
けれども最近では、もしかしたらお金がなくても、お金に代わる他の価値を提供できれば、生きていくことはできるのではないかということにも気づき始めました。
執着を手放すことが、実は本当の豊かさなのかもしれません。
人間関係に疲れた時に読みたい名言
なつかせたもの、絆を結んだものしか、ほんとうに知ることはできないよ
ぼくらは互いに、なくてはならない存在になる。きみはぼくにとって、世界でひとりだけの人になる。ぼくもきみにとって、世界で一匹だけのキツネになる……。
だけど、もし、あんたが、おれと仲良くしてくれたら、おれは、お日さまにあたったような気もちになって、暮らしてゆけるんだ。足音だって、きょうまできいてきたのとは、ちがったのがきけるんだ。ほかの足音がすると、おれは、穴の中にすっこんでしまう。でも、あんたの足音がすると、おれは、音楽でもきいている気もちになって、穴の外へはいだすだろうね。(中略)だけど、あんたのその金色の髪は美しいなあ。あんたがおれと仲よくしてくれたら、おれにゃ、そいつが、すばらしいものに見えるだろう。金色の麦を見ると、あんたを思い出すだろうな。それに、麦を吹く風の音も、おれにゃうれしいだろうな……
~キツネ~
キツネが、王子さまに話した言葉の一部です。
「なつかせる」「絆を結ぶ」ということの素晴らしさを教えてくれる名言です。
ただすれ違うだけの人たちや動物たちには何も心を動かされませんが、一たび絆を結ぶことでかけがえのない存在になるのです。
王子さまに会うまでは、恐怖を感じていた人の足音や、見ると気がふさいでいた麦。
王子さまに会ってからは、その足音が音楽に聞こえるようになり、麦を見ると王子様の美しい金色の髪を嬉しく思い出すようになると言います。
キツネの中の記憶が、たった一人の存在によって美しく書き換えられたということです。
この発想が何と純粋で美しいのだろうと、心が温かくなりますね。
では、人と真に仲よくするためにはどうしたらよいのでしょうか。
キツネが答えました。
「しんぼうが大事だよ。最初は、おれからすこしはなれて、こんなふうに、草の中にすわるんだ。おれは、あんたをちょいちょい横目で見る。あんたは、なんにもいわない。それも、ことばっていうやつが、勘ちがいのもとだからだよ。一日一日とたってゆくうちにゃ、あんたは、だんだんと近いところへきて、すわれるようになるんだ……」
辛抱が大事なんですね。
素晴らしい関係性というのは、インスタントに築けるものではないのです。
関わると決めた相手に対しては、急がず焦らずじっくりと関わっていくことが大切。
当たり前のことではありますが、すぐに見限ってしまって離れてしまうようでは、本当の友人・仲間としての関係性は築けない訳です。
人とのつながりがとても簡単にできるようになった便利な世の中で、改めて心に留めておきたい言葉だと私は思います。
さっきの秘密をいおうかね。なに、なんでもないことだよ。心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ。
~キツネ~
目に見えるものは有形のものだけとは限りません。
見た目・年齢・肩書・生まれ・性別・皮膚の色・思想・言葉などなど…。
王子さまはこれを聞いて、バラの表面しか見ていなかったことに気づきます。
傲慢さという鎧で本当は弱さを隠していたということや、毎日良い香りで満たしてくれていたということに目を向けられるようになるのです。
心がささくれている時に読みたい言葉
星があんなに美しいのも、目に見えない花が一つあるからなんだよ……
砂漠が美しいのは、どこかに井戸をかくしているからだよ……
ぼく:そうだよ、家でも星でも砂漠でも、その美しいところは、目に見えないものさ
王子さま:うれしいな、きみが、ぼくのキツネとおなじことをいうんだから〈この王子さまの寝顔を見ると、ぼくは涙の出るほどうれしいんだが、それも、この王子さまが、一輪の花をいつまでも忘れずにいるからなんだ。バラの花のすがたが、ねむっているあいだも、ランプの灯のようにこの王子さまの心の中に光っているからなんだ……〉
秘めることで醸し出される美しさのことを述べています。
人はなぜ美しいと感じることができるのでしょうか。
特にこれがあれば美しい、などという基準があるわけではありません。
先程キツネが言っていた、「かんじんなことは、目に見えないんだよ」という言葉とつながりますね。
秘めていることが美しいとはどういうことなのか。
表面的な美しさで物事をみるものではない、ということなのではないかと私は思っています。
目に見えないものの美しさを感じる心があるかどうか、と言われている気がしてドキッとしてしまいますが。
最初から美しいモノがそこに存在するのではなくて、感じる人の心の中に美しさが存在しているということかなと思うのです。
美しさを感じられる人の心の中にも、きっと大切な存在があり、触れる人やモノ全てが誰かにとっての大切な存在であると感じることで、世界を輝きに満ちたものへと変えられるのではないでしょうか。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。管理人の佐藤想一郎と申します。
私が執筆しました、レポート『Cycle(サイクル)』では、今まであまり語られることのなかった〝引き寄せの法則の、もう1つの側面〟について書いています。
・「ワクワク」のダークサイド(暗黒面)とは
・9割の人が見落とす〝引き寄せられない〟根本原因
・想像すら超えた未来を引き寄せる、運命を変える秘訣
といったことにも触れています。
よろしければ読んでみてくださいね。
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