関係を築く

仕事が覚えられない新人・後輩・バイトが見違えてしまう教え方

仕事の覚えが悪い人への教え方

理解力もスキルもあって仕事の飲み込みがめちゃくちゃ早い人と、何回教えても「これどうするんでしたっけ?」と一向に覚えられない人がいます。

やる気がないのだろうか? それとも教え方が悪いのだろうか? どちらにしてもしょんぼりしてしまいますよね。

でも、それは仕事が覚えられない新人さんや後輩、あるいはバイトの人も同じこと。覚えられなくていつも精神的にいっぱいいっぱい、自信を無くして「やめよかな…」と転職を考え始めています。

どうしても仕事が合わなければそれも致し方ありませんが、せっかくなら少しでも覚えてスキルを身に着けていって気持ちよくお別れしたいですよね。もちろん、ちゃんと仕事ができるようになって残ってくれたらもっと嬉しい。

また同じところ質問された

私も会社員時代に事務をしていたときには、短期のインターン生の人から数か月のトライアル雇用の人、長期アルバイトの初期研修まで何十人にも仕事を教えてきました。「全然聞いてないじゃん」とガッカリしてしまったり、あまりの覚えなさにイラッとしてしまうことも多々ありました。

その後、独立して一時期アルバイトをするようになり、初めての飲食店の仕事が全くできず、「覚えられないのは、こんなにつらいのか」と逆の立場も思う存分味わいました。

そこで、これまでに私が教えるときにやってみた工夫や、逆の立場で気づいたことも含めて、仕事が覚えられない人への教え方・指導方法をまとめました。

覚えられない人がある日いきなりバリバリ仕事をするようになるかどうかは分かりませんが、教える方の気持が楽になり、新人さんや後輩との人間関係は良くなると思います。実際、それでモチベーションが上がって仕事への意識が変わり化けることもあるかもしれません。

覚えの悪い人に仕事を教える・マインド編

誰でも最初は新人

出世されている方ほど、環境への適応能力が高く新人の頃にあまり苦労しなかったかもしれません。そんな方は、小学校に入学し立ての頃を思い出してみてください。

6年生はすごく大きく見えて、「友達ができるかな」と心配で、時にはお腹が痛くなったり、どうしていいか分からないこともあったと思います。最初は勉強どころではありませんでしたよね。

新人さんも、新しい職場と新しい人間関係に慣れるのだけでもいっぱいいっぱいです。 まずは仕事にちゃんと来てくれることに感謝して、認めてあげましょう。(と、昔上司から言われました。)

教える人の5つの禁句

仕事を教えるときの禁句

さて、新人さんに教えるにあたって、絶対に口にしてはいけないセリフが5つあります。

「前にも教えたよね」

上司や先輩も忙しいのです。同じことを何回も聞かれたり、絶対マニュアルに書いてあるしメモも取らせてあるのに気軽に質問されたり、するとついイラッとしたり、カチンときたりしてしまいます。

そんなとき、新人さんは次々にいろんなことを覚えなければいけない中、ごっちゃになってしまったりうろ覚えになってしまったりして自信がなくて、どこに何を書いたかもしっちゃかめっちゃかで、忙しそうなのを承知で意を決して質問に来ています。

冷たく突き放されたらますます自信を失ってしまい、意気消沈して仕事どころではなくなってしまうかもしれません。それに、うろ覚えのまま作業を進めて間違ったまま覚えてしまったら後でミスや大きなトラブルにつながる恐れもあります。

何回聞かれても丁寧に教えてあげましょう。ただし、全部そのまま繰り返し伝えることが良いとは限りません。

「メモ帳の昨日のページになんて書いてた?」とか「マニュアルの○ページもっかい読んで、それでも分からなかったらまた声かけてね」とか、少しずつ自立を促しましょう。

「これで何回目だ?」

この記事を読んでいる方にはあまりいないと思いますが、質問に対しても、ミスに対しても、「おまえ、これ何回目だと思ってるんだ!」と怒鳴るのは最悪 です。叱る側もくたびれますし、叱られる側は萎縮しますし、周りで聞いてる人も心配しますし、お客さんが居れば嫌な気分になるでしょう。

なお、空気の読めない私はバイト先の店長にいつもそうやって怒鳴られて「4回目です! 」などとそのまま答えていたら、ますます怒られました。ごめんなさい。

ミスを怒鳴ったり責めたりすると、職場全体がピリピリした雰囲気になり皆がミスを隠そうとするようになります。

「こうするといいよ」とか「ここを忘れないでね」と何回でも伝え、ミスが起こった時にはフォローしてあげましょう。

「適当にやっといて」

「適当に」「ほどよく」「だいたいでいいから」など、曖昧な指示も避けましょう。

なぜなら、新人さんはまだ何が程よい加減なのか良く分からず、どうしていいか迷ってしまうからです。それで「こんなに丁寧にやらなくていいのに」とか「適当すぎるでしょう」などと後で叱られ、しかもそれが先輩たち何人かの間で基準がバラバラだともうパニック です。

OKかNGかの具体的な判断基準を伝えるか、本当に適当でいい(デタラメでよい、の意味)ときはその旨を伝え、後でダメ出しをしないようにしてあげましょう。

OKは具体的に

「一々聞かないで自分で考えてよ」

「ググれば出てくるじゃないか」とか、「そんなのエクセルのヘルプに入ってるし」ということでも、どんくさい人(またはめんどくさがりな人)は容赦なく質問してきます。

「そんなことまでいちいち聞かないでくれ」 というセリフは飲み込んで、

「そっちの画面で、右上のはてなマーク押してみて。で、今の質問のキーワードを入力して、検索ボタンを押してください。こういう風に使い方が出てくるでしょ。次からはこれで一回調べてみて、5分以上探しても分からなかった時は遠慮なく声かけてね」

のように、調べ方も教えてあげましょう。年配の人はパソコンに慣れていませんが、最近の若い人もスマホ世代なためかあまり検索するという文化が薄いようです。調べ方も教えてあげましょう。

「こんなの常識でしょ」

「お前それは一般常識だろう」と思う事も、世代が違ったり、職場が違ったりすると非常識になることもあります。

私はファミレスで働くようになって初めて、トンカツに左右の向きがあるという事を知りました。「飲食業界では常識」ということも、専門に習っていない人にとっては「知らんがな」ってことがけっこうあります。

このぐらい知っているだろうという思い込みをなるべく無くして「これは知ってる?」と確認しながらかみ砕いて教えてあげましょう。

あまりにも業界について不勉強なときは、本の1冊でも読んで覚えて来てもらうというのもアリだと思います。

基本マインドは「期待しない」

期待しない

子供でもそうですが、期待が大きいほど失望が大きくなります。

「この子は天才かも!将来は東大!」と思っていたら実は凡人に育ったときに「なんだ、こんなもんか」と失望してしまいますね。逆に子供の頃に病弱で全然学校にも行けず、ただ生きててくれれば嬉しかった子が、高卒認定試験に受かって3流私大にでも入ってくれたらそれはもう大喜びです。

人が育つには、長い時間がかかることを念頭に置いて、新人のバイトや新卒社員にも最初からあれもこれも出来るようになると期待しないことです。

教えてできるようになるわけではありません。 その人が学んで、気づいて、成長するから色んなことを覚えていくわけです。だって、教わって何でも覚えられたら誰でも東大に行けちゃうじゃないですか。

バイトの人なら短くて数日か、数カ月かもしれません。転職が当たり前な現在、正社員で入ってきた人も5年、10年一緒に働くかどうかはお互い分かりません。

それでも、信頼して長く付き合う気持ちで関わって、気長に成長を待ってあげましょう

分かりやすさは人によりけり

分かりやすい教え方

私もそうだったのですが、仕事を教えようとするときにはだいたい自分が先輩から教わった方法そのままか、ちょっぴり自分流を付け足して「これなら分かりやすいかな」というやり方を選ぶと思います。

このときに一つ注意したいことは、教え方の「分かりやすさ」は人によって違うということです。教わる人のタイプを見抜いて、分かりやすいようにアレンジして教えてあげるとぐんと伝わりやすくなります。

覚えておくと使える例として、「利き感覚」についてお伝えしましょう。

カウンセリング、コーチングに使われる心理学のNLP(Neuro Linguistic Programming,神経言語プログラミング)では、人間の持っている感覚の得意分野で人を分類します。

手にも右利き、左利き、とよく使う手があるように、感覚にも「利き感覚」があるんですね。

効き感覚は、

  • 視覚優位
  • 聴覚優位
  • 身体感覚優位(触覚・嗅覚・味覚)

の3パターンに分かれます。

人によって分かりやすい教え方が違う

視覚優位の人への教え方

視覚優位の人は、イメージ力が強く、頭に浮かぶイメージの大きな情報量をを伝えようとするので早口になる傾向があります。

「○○のように見える」「イメージできません」など、視覚に関わる言葉の頻度が多いのも特徴。メールは絵文字が多くて派手。

説明を文字で読んだり耳で聞いたりするよりも、図や絵や実際の作業を見てイメージで記憶するのが得意です。若い人だと「動画に撮っていいですか? 」と聞いてくる場合も。メモするのがめんどうくさいのではなく、その方が覚えやすいのです。

聴覚優位の人への教え方

聴覚優位の人は、物事を文字や数字などで言語的に捉えます。思考も論理的で言葉で処理しているので、ブツブツ独り言を言っていることが多いです。

「○○のように聞こえる」「ドーン」等の擬音が多く、論理的に正しいかや言葉尻を気にする傾向があり、メールは改行が無く文字ばっかりずらり。

分厚いマニュアルがあると安心します。また、放っておいてもメモを熱心に取ります。しかし覚えるのと出来るのは別物のようです。「バカ」「殺すぞ」などネガティブな言葉からダメージを受けやすく、また曖昧な指示で混乱するので感情を抜いてハッキリと伝えるようにしましょう。

体感覚優位の人への教え方

体感覚優位の人は、自分の感覚や気持ちをいったん言語化してから話そうとするため、会話がワンテンポ遅れます。低めのトーンで、体のどこかを手で触れながら話すことが多いです。

「腑に落ちました」「温かい雰囲気」「何か臭う」「おいしい話だ」など感覚を含む言葉が良く出ます。

話を聞くときにはゆっくり待ってあげ、教える時には実際にやってもらって感覚をつかんでもらうことに一番時間をかけましょう。メモを取るのも文字で記憶するというよりは、書く感覚で記憶しています。

 

自分と相手のタイプの違いを理解して、教える側が合わせてあげることが大切です。なお、大人数相手のときは教え方をバランス良くミックスしましょう。

他にも男女での認識の違いや性格のタイプ、精神の発達段階によっても覚えやすさやモチベーションの火のつきどころは変わります。「自分がこうだったから」「自分のときはこうだった」は置いておいて、その人をそのまま理解するように努めましょう。

教育係だからと張り切っていると、思いがけず新人さんを自分ひとりで囲い込んでしまうことがあります。

たとえ直属の部下でも、新人さんは自分の「もの」ではなく、自分ひとりから仕事を教わるワケでもありません。

仕事が覚えられないその人にも、生まれてから今まで家庭や学校や友達社会の中でたくさんのことを学んできた人生があり、今この職場にも教えてくれる人がいっぱいいることを忘れないようにしましょう。

自分が有休を取る日に他の人のサポートに回ってもらったり、同じ新人さん同士で組んで何か作業をしてもらったりすると、新たな学びが得られるかもしれません。

職場の色んな人の良いところを吸収してもらえるように、また育たないのが自分だけのせいだとうぬぼれないように、「皆で育てているんだ」という意識を持っておきましょう。

覚えの悪い人に仕事を教える・実践編

やって見せ、やらせてみせ

ここからは、実際に覚えの悪い人にある作業を覚えてもらうときの実践編となります。主に事務作業を想定していますが、基本は共通で使えると思います。

1 目的と情熱を共有する

意外と忘れがちなのですが、その会社の目的から業務の目的、そして作業の目的までの全体像 をサラッとでも話しておかないと「何のためにやってるんだろう…、新人だからどうでもいい雑用なのかな…」とボーっと作業させてしまうことになります。

チラシを折ってもらうのでも、「これはお客様が初めに会社のことを知ってもらうためのもので、第一印象が決まる大事なものなんです。スピードも大事ですが、ズレたりよれたりしないように。お客さんがチラシを受け取るときの笑顔をイメージしながらやりましょう」

などと、作業の意味が分かっているのといないのとでは、仕事に対する情熱の温度が変わってきます。

2 メモを取るように指示

今からメモを取って欲しい大事な説明だよ、というときはメモを取ることも指示しましょう。

話を聞く方はどのぐらいの分量を書くのか分からないため、小さいメモ帳がいいのか、ノートが良いのか、もしくは、あなたが持っている自分用メモがあれば「こういう感じ」というのを見せてあげると良いでしょう。

最初のうちは、メモの取り方も見て必要があればアドバイスしましょう。

メモ

3 手順をやって見せる

まずは手順をやって見せましょう。細かいところは置いておいて、全体の流れとポイントだけ、ゆっくり説明します。

メモを取りながら見てもらうので、パッパパッパ進めないように気を付けます。重要なところは、「ここは必ずチェック、って書いておいて」等とメモする内容も指示します。

一回メモを取りながら見てもらったら、見逃したところがないか、今度は手を止めて見る方に集中して二回目を見せます。

4 メモを見ながらやってもらうのを見守る

次は、メモを見てもらいながら、分からないときはすぐ質問・確認してもらう「ナビゲーション付き」で一通り手順を体験してもらいましょう。

ここで、メモに漏れや抜けがあれば追記してもらい、何回か不安が無くなるまで見守りつきで作業をさせます。

5 しばらく自分でやってもらう

何となく行けそうかな、となったら、15分から30分ぐらい、「仮免許」で一人で作業させましょう。 間違って覚えるといけないので、あまり長くない方が良いです。

このとき、分からない点があったときはすぐ声を掛けてもらうのか、メモして置いてあとでまとめて確認するのかも指示しておきます。いつ質問していいか分からないと悩む時間が無駄になります。

出来上がったらチェックして、問題なければ引き続き作業を進めてもらいます。
褒めて育てる

6 褒めながら1個ずつレベルアップ

最初は「手順を覚えた」ということを褒め、「じゃあ、今度は少しスピードアップしてみよう」と次の課題を与えます。1個ずつレベルアップするイメージです。

「早く、ミスも無いように」などと1回で2個注意させると両方できなくなる ので、1個ずつにしましょう。

7 注意・指摘は具体的に1個ずつ

手順を間違えていたり、明らかに手抜きや不注意な点があれば具体的に指摘しましょう。

たとえば、「チェック漏れが多いから気をつけて」では具体的に改善されません。「定規を当てて、1行ずつ飛ばさないように見ていってね」等とどう改善すればいいのかもアドバイスしましょう。

これも、一気にあれもこれも言うとパニック になってしまうので、1個ずつ教えるようにしましょう。

覚えが悪い新人に自信を持たせるには、簡単なことを大量にさせる

自信をつけさせる

新人さんには、なるべく手数が少なくて簡単に出来ることをとにかく大量にやってもらいましょう

お互いに覚える-覚えさせるにかかるエネルギーを節約して、しかも達成感や「皆の役に立っている」という自己有用感を味わってもらいモチベーションが上がります。

難しい作業は分解して、一部だけをやってもらうようにするのもアリですね。できないことを嘆くよりも、できることをガンガンやってもらいましょう。

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