ブラック企業で働いていて、文句を言いながらもなかなか辞めない人を不思議に思いませんか?
能力的にはもっと良い条件のところに余裕で転職できるはずなのに、なぜ薄給で長時間労働を続けてしまうのでしょうか。
家族や友人がそうだと、健康面でも心配ですよね。
ブラック企業を辞められない理由はいくつかありますが、事務的なことは何とでもなってしまいほとんど問題になりません。
実はもっとも根深い原因は「認知の歪み」なのです。
この記事では、ブラック企業を辞められない本当の理由「現状維持バイアス」と、バイアスを外して大切な人にブラック企業を辞めさせる方法をご紹介します。
ブラック企業の洗脳から目を覚まして元気な姿に戻ってもらうにはどうしたらよいのでしょうか?
まずは良くある「辞められない理由」が嘘である理由から見ていきましょう!
目次
ブラック企業を辞められない理由はない。なのになぜ?
ブラック企業で働いている人は口を揃えて「辞められない」「辞めさせてもらえない」と言います。
身体を壊しているのに辞められないなんてアリなのでしょうか?
結論から言うと、当然ですが辞めることはできます。
○年以上務めなければ違約金は違法です。
「入社時に研修を行うので、2年未満で辞めた場合は研修費を請求するという契約書を書かされた」「3年以内で辞めると違約金が発生すると言われた」
違約金が払えないのが理由で、退職をためらっていませんか?
実は、こういった違約金・罰金の類いは違法です!
労働基準法では、使用者である会社は、労働者である従業員に対して違約金や罰金を支払わせる契約を結ぶことはできないことになっています。
仮に、従業員に違約金を課している会社があれば、労働基準法違反に問われる可能性があります。
違法ですから、雇用契約書に書かれていても無効となります。
法的には2週間前の申し出で辞められる。
「急に辞めると職場の人に迷惑をかけてしまう」「今年度いっぱいは働くように言われた」
すぐには辞められないから、とズルズル働かされるケースも多いようです。
しかし、これも法的には無期雇用なら最短2週間で辞められることになっています[1]。
2週間以内にバックレたら損害賠償請求される可能性がありますが、2週間以上前、月給制なら辞める月の前半に申し出ればその月いっぱいで辞められることになります。
人手不足と言ってもそれは経営者の責任ですから、すぐに後任が見つからないから辞められないなんてことはありません。
当面のお金も心配なし。
ブラック企業で働いていては転職活動どころではなく、必然的に辞めてから次の職を探すことになります。
当面の生活費を心配して退職をためらう人もいるでしょう。
でも、お金面も全く問題ありません。
本人がまだ健康なら、今まで取得できなかった有給休暇が2年で20日以上残っているはず。
退職日まで有給休暇を一気に取得し、その間に就職活動をすることができます。
身体を壊したり、うつ病になったりしている場合は、過労を証明すれば会社都合退職にでき、翌月には失業保険がもらえます。
また、未払いの残業代を請求すれば結構な額になりますし、パワハラがあれば100万円以上の慰謝料請求ができた事例もあり、弁護士代を雇ってもお釣りが出ます。
よって辞めた後のお金の心配は無用です。
転職は売り手市場
この会社を辞めたら転職先が見つからないのでは、と心配する人もいるでしょう。
というのもブラック企業の上司は「うちで通用しないようなやつは、どこでも雇ってもらえないぞ」などと洗脳して自信を失わせるからです。
実際には、どこも人手不足で転職は売り手市場です。
試しに転職・求人dodaで未経験者歓迎・学歴不問・正社員・年収300万円以上の求人を検索してみたところ、全国で1,364件もヒットしました。
たぶん、今の条件よりはマシなところもあるはず。
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といったことを本人に伝えても、「でもでも、だって〜」でなかなか転職しないことが多いでしょう。
なぜ転職した方が明らかに生活も収入も良くなるのに、動けないのか?
過労で洗脳状態になり判断力が落ちていることもありますが、もうひとつ「認知のゆがみ」も原因になっています。
ブラック企業を辞められない心理「現状維持バイアス」
ろくに昇給もボーナスも見込めないばかりか、残業代すら出ない。
過労で身体を壊したり、うつ病になったりしても、会社は健康を返してはくれない。
ブラック企業で働き続けてもリスクしかないのに退職という合理的な判断ができないのは、人には現状維持を好む本能があり認知に歪みが起こるためです。
条件が悪くても現状維持を選んでしまう認知バイアスとは?
人には未知なもの・未経験のことを受け入れず、現状のままを望む心理作用があります。
身近な例は、通信会社の「学割」。スマホのプランが月額数百円程度〜、とびっくりするほど安くなっていますね。
さて、学生時代に学割でスマホを持った人が大人になると、どうするでしょうか?
改めて一番コスパの良い通信会社を探して乗り換える…といったことはせず、そのまま同じ通信会社を使い続ける人がほとんどです。
たとえ他に良さそうな店があったとしても、
- 今まで使ってきて信用できるから
- 他社に乗り換えて失敗したらイヤだ
- 学生のうちにお世話になったからもうちょっと使ってあげよう
- 変えることに何となく抵抗がある
といった理由で現状維持を選んでしまうのです。
このような認知の歪みのことを行動経済学で「現状維持バイアス」と呼びます。
変化によって得られるリターンよりも、失う可能性のあるリスクを過大評価してしまう傾向のこと。
変化を怖れるのは生存戦略
なぜこのような認知の歪みが生じるのかはハッキリとは分かっていませんが、危険を回避する本能ではないかと言われています。
かつて人類がまだ狩猟採集をして生活していた頃、慣れ親しんだ場所を離れて冒険するのには命の危険が伴いました。
初めて行く場所にはどこにトラの巣穴があるかも分かりませんし、食べたことのない植物には毒があるかもしれません。
そのため、変化には敏感に反応して危険を回避するようプログラムされているというわけ。
時代が変わって、通信会社を乗り換えたり、転職したりするぐらいで命を落とすことはなくなりましたが、私たちの本能は未だに変化を怖れているのです。
かといって、そのままブラック企業で働かせていたら、それこそ過労で死んじゃいますよね。
なんとかして現状がおかしいことに気づかせて辞めさせるにはどうしたら良いのでしょうか?
ここからは、ブラック企業を辞めさせたい大切な人にどう関わっていくのが良いか、現状維持バイアスの観点から考えてみましょう。
現状維持バイアスを外してブラック企業を辞めさせるには?
現状維持バイアスの外し方には次の3つの手順が必要です。
1.定量的に分析する
2.アドバイスを仰ぐ
3.最悪のケースを想定する
引用:現状維持バイアスとは?意味や事例は?外し方は?
それぞれ、具体的に解説しましょう。
…とその前に、上記はブラック企業で働いている本人が自分で「現状維持バイアスを外したい」と思っていなければできないことですから、その手前からやっていかなければなりません。
まずは話を聞いて上げる
過労自殺と聞くと
「死ぬくらいなら辞めればいいのに」
と思う人は多いでしょうが
その程度の判断力すら失ってしまうのがブラックの恐ろしいところなのです引用:『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)』汐街コナ
ブラック企業で働く人に対して、「そんな会社ブラックだから辞めちゃいなよ」「それしか給料出ないのにこき使われてバカじゃないの」などとと頭ごなしに言うのは逆効果です。
本人は理解してもらえないと思い、ますます聞く耳を持たなくなってしまうでしょう。
ではどうすれば良いのか?
まずは、本人の言い分を聞いて上げましょう。
「そんなに休みが取れないなんて、大変だね」「頑張ってるね」
アドバイスしたい気持ちはぐっと押さえ、ひたすら愚痴を聞いて共感し、認めてあげることです。
くれぐれも押しつけたり、誘導したりしてはいけません。
あまり話したがらない人の場合は、ただ一緒に穏やかな時間を過ごすだけでも違います。
受け止めてくれるという信頼ができると、心を開いてれるようになるでしょう。
相手から「実は辞めたいんだけど、なかなか辞められない」「どうしたらいいかな?」とアドバイスを求められたら初めてアドバイスができます。
客観的なデータを見せる(定量分析)
認知の歪みを解除するには、「そんな会社はおかしいよ!」「あり得ない!」などと主観的な意見を強く言うよりも、淡々と客観的なデータを見せた方が有効です。
たとえば、次のようなデータを見せると良いでしょう。
- 現在の残業時間と、同業の平均的な残業時間
- 現在の給与額と、同じぐらいの年齢・スキルの人の平均的な給与額
- このまま働き続けた場合と、転職した場合で生涯賃金にはどのぐらいの差がでるのか
- 転職するとしたら、条件が良くなる求人は何件あるのか
このように数値を比較することを、行動経済学では「定量分析」と言います。
定量的に分析すると、現状維持バイアスによる判断の偏りを防ぐことができるのです。
とりあえず病院に連れて行く
現状維持バイアスを外すには、利害関係のない第三者のアドバイスを仰ぐのも効果的です。
具体的には、とりあえず1日だけでも休みを取って内科を受診することを勧めてみましょう。
いくら「休め」と言っても聞かない人でも、医師という権威ある立場の人から「過労だから、休まなきゃダメだよ」と言われれば目が覚めるはず!
ついでに診断書をもらっておけば、過労を証明し有利な条件で退職できます。
即入院になるような場合は、辞めることは急がすに傷病手当をもらって体力を回復しながらじっくり作戦を練るのが良いでしょう。
本人が会社とやり合うのを怖がっているときは、弁護士や退職代行に間に入ってもらえばストレスがありません。
最悪のケースを想定する
現状維持バイアスは、そもそもリスク回避のために働いている脳内のプログラムです。
最悪のケースを認識しておくことにより「それ以上は悪くならない」と落ち着いて判断することができるようになります。
では、最悪のケースとは何かというと、ブラック企業の上司に怒られることではなく、職を失って生活保護を受けて肩身の狭い思いをすることでもなくて、無理に働き続けて過労死しちゃうことですよね。
それでもピンと来ないようなら、映画『ツレがウツになりまして』のように「このまま辞めないなら離婚だ!」などと脅しを掛けるのも最終手段としてはアリかもしれません。
ブラック企業を辞められない現状維持バイアス|まとめ
ブラック企業を辞められない理由のほとんどは法的には問題にならず、お金面も転職先も今の日本でなら何とかなります。
それどころか、貯まった有給休暇や傷病手当をもらってしばらくのんびり休んだり、会社都合退職で失業保険をもらったり、未払いの残業代や慰謝料を請求したりできる場合もあります。
にもかかわらず現状維持を選択してしまうのは、変化のリスクに過剰に反応してしまう「現状維持バイアス」によるものです。
まずは本人の言い分をよく聞いてあげてオープンに話せる信頼関係を作り、
- 客観的なデータを見せる
- 病院で医師の診断を受けることを勧める
- 辞めないとどうなるか最悪のケースを突きつける
を行いましょう。
現状維持バイアスを外して冷静に考えれば、「なんであんなブラック企業で働いてたんだっけ…」と目を覚ましてくれるはずです!
あなたの大切な人をブラック企業の魔の手から守るため、愚痴を聞いて上げたり、情報を集めたり、できることをサポートしてあげましょう。
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避けるべき薄給な仕事の見分け方は、以下の記事で解説しています。
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ここまで読んでくださって、ありがとうございます。管理人の佐藤想一郎と申します。
私が執筆しました、レポート『Cycle(サイクル)』では、今まであまり語られることのなかった〝引き寄せの法則の、もう1つの側面〟について書いています。
・「ワクワク」のダークサイド(暗黒面)とは
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といったことにも触れています。
よろしければ読んでみてくださいね。
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